文献紹介6 基本チェックリストの検証 (事務局 田村)2024/1/17
今回は、基本チェックリスト(KCL)の要介護認定予測のsensitivity とspecificityについての検証的研究の論文を紹介します。
(紹介する論文)
遠又靖丈、寶澤篤、大森(松田)芳、他. 1年間の要介護認定発生に対する基本チェックリストの予測妥当性の検証:大崎コホート2006研究. 日本公衆衛生誌 2011;58(1):3-13 (東北大学 公衆衛生学分野)
・年齢構成:75歳以上(後期高齢者)が43.1%を占める解析対象群。全国の年齢構成は75歳以上が38.2%。本研究の解析対象者がやや高いが、全国の状況と大きく変わらないとしている。
・KCLを解答した65歳以上14,636人の1年後の要介護認定発生率は3.3%
・KCL各項目と要介護認定発生率のオッズ比:全項目で該当ありで有意な上昇あり(論文中の表1)
・二次予防(閉じこもり、認知症、うつ予防・支援)事業対象者の選定基準に該当した人は5,560人、38%
・全ての分野の該当基準で有意なオッズ比の上昇あり(論文中の表2)。とくにうつ予防・支援を除く20項目のオッズ比は高い。これにはほ とんどの例(94.5%)で、KCLのNo.1-No.5(手段的日常生活動作、IADL)の1項目以上に該当している。
IADLの項目を含んでいることが、オッズ比が高くなった一因である。
・各分野の該当基準における新規の要介護認定に対する感度・特異度(論文中の表3)。
うつ予防・支援を除く20項目で感度55.7%、特異度90.3%。二次予防事業対象者だと感度78.1%、特異度63.4%で良好。ただ、陽性反応的中度が6.8%と低いことから偽陽性者が多く拾い上げられている。結果としてこの事業担当者に負担をかけている可能性。
・ROCでAUCがもっとも高かったのは、うつ予防・支援を除く20項目。
・「うつ予防・支援を除く20項目」 の最適カットオフポイントとして抽出された7項目以上を該当基準とすると感度・特異度は 77.0%、75.6%である。
結論
1年間の要介護認定発生に対するKCLの予測スクリーニングに関しては、「うつ予防・支援を除く20項目」の合計該当項目数を重要な指標として用いると良い。
事務局 田村のコメント
・基本チェックリスト(KCL)は 、「うつ予防・支援を除く20項目」のうち7項目以上を該当基準とすると、調査後1年間に要介護認定の新規発生の予測に有用との結論である。
・KCLの項目をみると高齢者機能評価の3つのドメインをカバーしている。中でも「手段的日常生活動作、IADL」が機能評価として有用であることが本研究でも示唆されている。
・我々のリンパ腫の検討でもIADLが化学療法毒性の予測に有用であることを報告しており、忙しくて時間が無い場合は、IADLだけでもチェックすると患者の心身の状態が全面的に把握できる可能性があり、個人的にはお勧めである。
患者さんに一言「買い物に1人でいけますか?どうやって行っていますか?」と聞いていください。
解析方法 1. 多重ロジスティック回帰分析 ・目的変数:要介護認定発生リスク因子の有無 ・説明変数: ①各項目での該当の有無 ②二次予防事業の対象者選定に用いられる7分野の基準への該当の有無 ③二次予防事業の対象者の選定基準への該当の有無 2.感度、特異度、陽性反応的中度によるスクリーニングの精度の評価 3.ROC分析のAUCによるスクリーニングの精度の評価 |
基本チェックリストと以下の標準的な機能評価(四肢骨格筋量以外)とは有意義な関連がみられた
握力、5メートル歩行時間
全活動スコア指標
Mini-nutritional assessment
Mini-mental state examination
Geriatric depression scale-15