文献紹介2-1(事務局 田村)2023/10/23

文献紹介第2弾をお送りします。今回は、脆弱なDLBCL患者の‘標準治療‘と考えられるR-miniCHOP療法、その根拠となった論文を紹介します。

(紹介する論文)
Peyrade F, Fabrice Jardin F, Thieblemont C,et al. Attenuated immunochemotherapy regimen (R-miniCHOP) in elderly patients older than 80 years with diffuse large B-cell lymphoma: a multicentre, single-arm, phase 2 trial. Lancet Oncol 2011;12(5):460-468






・背景
男性:51% 女性49%
年齢中央値 83歳(80-95)
PS0-1: 60%、PS2: 34%
病期 3-4: 75%、
aaIPI 3: 31%、aaIPI 4-5:40%、
IADL制限ありく4: 53%


文献紹介2-2(事務局 田村)2023/11/8

前回10月23日に続いて、R-miniCHOPの紹介です。
これから治療成績と安全性をみていきましょう。

奏効率
CR:+uCR: 63%、PR: 11%、SD:1%、PD: 5%、死亡:18%、不明 2%
OS: 29か月 中央値
DFS: 21か月 中央値 


予後因子(多変量解析)  Hazard ratio(95% CI) P値
aaIPI2-3            1.4(0.6-3.5)     0.46
節外病変>1          1.2(0.6-2.4)   0.59
血清Alb.≦35g/L    3.2(1.4-7.1)   0.0053
β-MG>3mg/L     0.9(0.4-1.9)   0.75
腫瘍>10cm     1.4(0.6-2.9)   0.43
IADL scoreく4    1.9(1.0-3.9)   0.064



[研究者たちの研究結果の解釈]
・系統的文献検索(PubMed)結果
 60歳以上のDLBCLの臨床研究は多くあるが、80歳以上の前向き研究はなく4つの後ろ向き観察研究があった。その4研究結果は、患者に合った化学療法を実施することにより良好な結果が得られることが示唆されていた。
・本研究結果、すなわちR-miniCHOP療法で良好な奏効率・生存率が得られたことから、この患者層 (80歳以上のDLBCLで良好なPS)の標準療法とすべきであろうと研究者たちは述べている。

[リリー研究事務局KTのコメント]
・GELAグループをもってしても超高齢者(抗がん薬治療の対象としては)の臨床試験を実施するにあたり、RCTでなく単アーム試験を選ばざるを得なかったのではないか。
日本だけでなく世界的にも高齢者を対象とした研究で、RCTはその大半が失敗し、観察研究でも症例集積に苦労をした歴史がある。
・単アームの限界はあるが、超高齢者が対象で約半数にIADLに制限のある脆弱例(vulnerable)が含まれている前向き試験で、R-miniCHOP療法の有用性が示されたことから、研究者たちの解釈を支持する。
・血清アルブミンが生命予後に強く影響している。低アルブミン血症は、栄養不良、サイトカイン産生、進行期で起こる。また、外科領域でも術前の栄養状態は術後合併症と相関があることが示されており 高齢者の栄養管理は極めて重要であることが強く示唆される。
・IADL(手段的日常生活動作)は、高齢者機能評価ツールの中でも身体機能だけでなく一定以上の認知機能が 維持されていないと低いスコアがでる可能性がある。IADL低下が化学療法の有害事象と関連することが多くの試験で示されている(Tanaka T, Tamura K et al. Scientific Reports | (2022) 12:3124 |  https://doi.org/10.1038/s41598-022-07164-w)ので、本研究でIADLを選択したのは妥当である。ただし、本研究で生命予後因子としての有用性に関しては、単変量で有意、多変量でp=0.064で傾向を示すにとどまっている。
・同じグループが60-80歳DLBCL例に対するfull R-CHOP治療成績と比べると(Coiffer et al. N Engl J Med 2002;346:235-42)、短い余命、低い治療強度により当然全生存期間は落ちる。

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