高齢がん患者の医療と介護の連携に関する研究
~高齢悪性リンパ腫患者の治療と自立性喪失、介護度増悪に関する前向き観察研究~
Treatment and loss of independency/progression of nursing care levels in older lymphoma patients
(Short title: Lymphoma and loss of independence in the elderly, Acronym: LyLIE study)
研究代表者
照井康仁 埼玉医科大学病院 血液内科教授
日本のがん診療において、もっとも重要な課題の一つは、心身の機能が衰えてくる高齢がん患者のマネジメントである。
元気な高齢がん患者(fit)は非高齢者と同等の治療を受けることにより、がん特異的な治療成績(cancer-specific treatment outcomes)が得られる。一方、全身状態の悪いfrail例では、がん治療によるベネフィットが少ないことから緩和的ながん治療あるいはベストサポーティブケア(BSC)が選択される。しかし、その間に位置するprefrail (vulnerable、脆弱)な高齢がん患者の診療指針がなく、その脆弱性に応じて見守りや介護により生活基盤を支えられながら、がん治療チームの経験と診療方針によりがん診療が実施される。
当初がん治療が可能な状態であった高齢がん患者が、がん治療経過中にその副作用の影響のため全身状態が悪化することをしばしば経験する。高齢者は心身機能の予備能力が少なく副作用から回復遅延がみられ、治療前の状態に回復しない例も度々経験する。そのために治療強度の減弱あるいはより侵襲の少ない治療に変更することがよく行われる。
高齢者はがんに限らず、余命が非高齢者に比し短く、加齢に伴う心身の機能が低下していることから、彼らの治療に対する期待は延命よりも自立性の維持や家族らへの負担軽減である。そこで、潜在的に抗がん薬のみで長期生存が可能な高齢のびまん性大細胞B 細胞リンパ腫(DLBCL)を代表とするB細胞リンパ腫患者を対象に、健康アウトカムを治療中・後の自立性喪失や要介護度の悪化とし、自立性喪失や介護の増悪にいたったリスク要因を検討することとした。