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ご挨拶

日本FN研究会の新しいHPを開設するにあたり

日本FN研究会 代表世話人 田村和夫

 日本FN研究会のホームページ改訂にあたり、本研究会の歴史を述べ、今後の研究の方向性を申し上げたいと思います。FNはfebrile neutropeniaの頭文字をとったものです。FNを日本において最初に注目されたのは正岡徹先生(大阪府立成人病センター名誉院)で、さかのぼること1998年に国内外のエクスパートを招請し、FNマネジメントに対する第1回コンセンサス会議を宮崎で開催されたのがきっかけで日本のFN研究が始まります。 その後、コンセンサス会議で議論された内容をもとにFNマネジメントに対する最初のガイドラインが作成されました。ところが日本ではエビデンスのほとんどない領域ですので、ガイドラインを検証する研究が必要となりました。そこで、日本FN研究会を立ち上げ、全国の血液専門病院に声をかけて、その当時米国でFNに保険承認を得ていた第4世代のセフェム系抗生物質であるセフェピムを使った前向きの臨床試験を2000年に開始したわけであります。

 このころはFNといってもまだなじみの無い疾患名で、日本では「好中球減少時の発熱」といった日本語訳が使われていました。「発熱性好中球減少症」と疾患名として一般に普及してきたのは、日本での臨床試験の結果をもとにセフェピムが本疾患に適用拡大が認められ、保険病名として承認されてからのことです(2004年)。その後、第2次のカルバペネムのFNに対する有用性の研究、第3次の白血病寛解導入療法時の予防的抗真菌薬の関する研究、第4次の低リスク群の検討、第5次の抗真菌薬ボリコナゾールの有用性の研究、と現在、第5次まで研究が進んでおります。第3次までの研究結果は、感染症関連の国内外の学術誌に発表してきております。

 現在、とくに血液領域では、深在性真菌症の対応が新しい段階にはいってきております。この数年、新しい抗真菌薬がいくつか市場にでてきており、FNにおけるその位置づけや適正使用についての研究が求められています。また、新規の骨格をもった抗菌薬の開発がほとんどない現状の中、現存の薬剤をいかにうまくFNに応用していくか、有効性ばかりでなく、耐性菌の発現予防、FN患者の背景の検討が今後とも研究しなければならない課題であります。

 血液領域ばかりでなく、強力ながん化学療法、放射線療法を実施する診療科においては遭遇する機会の多いFNを適正な予防・治療を展開することにより、患者のQOLを改善し、本来の目的であるがんの治療を滞りなく完遂して治癒率の向上あるいは延命につながるように研究を続けていく必要があります。診療にお忙しい中ではありますが、ぜひ研究にご協力いただくことをお願いして、挨拶に代えさせていただきます。